日本語プロフィシェンシー研究学会へようこそ

日本語プロフィシェンシー研究学会は2023年度より新たな体制で運営を始めました。本学会の前身である関西OPI研究会創立以来会長を務めてこられた鎌田修前会長より会長役を引き継ぎました。よろしくお願いいたします。

さて、本学会はその名の通り日本語のプロフィシェンシーを研究する学会です。日本語を学ぶ人たちが願う「日本語がうまくなりたい」という思いは、言い換えると「日本語プロフィシェンシー(熟達度)のレベルを上げていきたい」ということでもあります。日本語の授業における「到達度」とは違う観点で日本語の上達を願っていると捉えることができると思います。本学会のキーワードである「プロフィシェンシー」ということばは、さらに多様な解釈が可能ですが、私なりの価値づけをしてみたいと思います。

日本語を上達させたいという人たちに応えるためにも、日本語教員がプロフィシェンシーの観点を持つ積極的な意味として、3つ挙げることができるのではないかと思います。①多角的に日本語を捉えること、②現在地を次の段階との関係づけながら俯瞰的に学びを捉えること、③その場で発揮できる機能的言語運用力を上げることに教育の意義を持つことができること。1つ目の多角的に日本語を捉えるというのは、文法や語彙、発音だけでなく、流ちょうさや分かりやすさ、談話構成、社会文化的能力、語用論的能力など多様な観点を定義づけして用いていることからもわかるように、多角的に見る習慣ができると思います。また、それぞれを局所的に分析することもできます。2つめの俯瞰的に見ることができるという点に関しては、熟達度の各レベルを規定する記述も細かく定義づけられるので、次は上達のために「ここに焦点を当てる」などができるだけでなく、大きく見た場合どこに向かって進んでいるのか、今どこにいるのかを、把握しながら指導できると思います。つまり、今の学びがどのように全体の中でつながっていくのかを認識できると言えます。3つ目のその場で発揮できる機能的言語運用力を上げることに教育の意義を持つことは、日々のクイズや期末テストが学習者にとっての最終目標なのではなく、日本語を使って何かを行う力を発揮するための基礎・土台を作っているのだという意識によって学習者が望んでいる日本語の学びに近づけることができることにつなげられると考えます。

日本語プロフィシェンシー研究は、これまで例会での講演、研究発表やワークショップなどで、あるいは、学会誌『日本語プロフィシェンシー研究』の定期刊行で発展してきました。さらにはこのプロフィシェンシー概念自体も柔軟に発展させていこうと昨年秋、『日本語プロフィシェンシー研究の広がり』を出版しました。学会創立10周年を記念したこの本は7つの部門からなっていて、「広がり」が実感できると思います。

日本語を使用する人々の営みを再構築することができる日本語プロフィシェンシー研究がますます発展することを期待しています。
会長 由井紀久子

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